アムロとの出逢いはベルトーチカを大きく変えた。 女らしくなり、泣き言はアムロにだけは打ち明けた。 両親が死んだ時のことや、悲しい別れを、戦争を誰が愛せるだろうか、と。 だが突然、事件が起こった。 「えっ」ロフトでツルリと滑らせた足、バランスを崩して、悲鳴をあげることもなく落ちた。アムロは頭を打ち気を失った。 駆けつけて来る、誰かの足音を耳にしながら。 目を覚ますと、そこは医務室だった。 『ロボットの看護婦?』 アムロの目の前には、感情の無い女型ロボットがいた。 身の回りの世話もロボットがやる時代が来るんだろうな。 それはなんと孤独だろうか、とアムロは思った。 アムロはふいに医務室から抜け出した。 廊下を歩き、先程まで整備していた、ガンダムのもとに向かう。 整備中に足を滑らすとは、自分でも原因が分からなかった。 次は気をつけようと、アムロは思った。 アムロがガンダムの前に立った。 その時、彼女は誰も横たわっていないベットを見て、驚いていた。 ここで安静にしているはずなのに、と彼女は不安になった。 アムロは額に、巻かれた包帯をするりと外した。 包帯は円を描いて、静寂した彼以外誰もいない、冷たい鉄の床に落ちた。 疼いている頭を抱えて、アムロはガンダムを整備する為の道具を手に取った。 道具はアムロの手に吸い尽く様に馴染む。 一時はガンダムに乗るのが嫌になったものだった。 しかし何時しかアムロの心のシワにみんなを守らなければと言う意識が行き渡り、その上には揺るがない固い決意の毛が生えた。 そう物思いにふける、アムロの背中に、伝わって来るいつか感じた温もりがある。 「ベルトーチカ。心配をかけたようだけど」 「アムロ!!」 彼女がさめざめと、自分の背中で泣き出すので、アムロは向き直り彼女の肩に手を置いた。 「すまない、不注意だった。もうこんなことはないから」 しばらく泣いていた彼女は、アムロを見た。 大きな濡れた瞳が輝いて、彼女は一層魅力的に見える。 でも、そんな彼女の涙の跡を、優しく指の腹で拭く。 「泣く、必要はないよ。ほら生きてる」 そう言って、ベルトーチカの頬に優しくキスをしたのであった。 「アムロの馬鹿!何が生きてるよ。安静にしなさい」 ベルトーチカは凄い勢いで彼の腕を引っ張ると、医務室へ連れ戻して、片時もアムロのそばから離れなかった。と、言う話である。 トップへ戻る