黒崎が夏でもあのコートを着ていて、脱水症状で少しふらふらする話 ↓ 「クロちゃん~。ご飯ですよ~」 俺が仕事から戻ると、あの女の声がした。 懲りもせずに、また餌をやって……。 あいつもどこの猫か分からなくなってきたな。 階段を何時もの様に登っているつもりだった。 だけど、何だか体が重い。 「おい……」 「黒崎……もう、クロちゃんお腹空いて、 私の部屋のドア、引っ掻いてたんだから、黒崎?」 視界が暗くなって、鈍い音がした。 次に意識が戻った時、俺は女の肩を借りてた。 「もうすぐでベットだからっ」 必死で俺を運ぼうとしてた。 その後、ベットの縁で二人して倒れ込んだ。 ふんわりとした匂いがして、何だか安心した。 ……冷たい…… 「起きた?はい、水。もう、ちゃんと水分取ってる? 夏なのに、コートなんて着てるからよ」 ずっと付いててくれたのか?とか、 ありがとな、とか、普通なら言える。 けど、俺は黙って受け取った。 「大丈夫そうね。じゃあ私はこれで」 背を向ける、女を返したくなかった。 何だかそんな気がしただけかも。 ただその結い上げた髪を、自分の手で自由にしたかった? のか。 俺の腕の中に彼女はすっぽりと入って、胸や背中が重なった。 「黒崎……」 俺の名前を呼びながら、 俺の腕から逃げ出そうとしない。 「氷柱……」 俺は、髪に顔を埋めて匂いを嗅いだ様だった。 次の瞬間、我に返って、女を自分の部屋から追い出した。 仕事で疲れたぐらいで、 人の温もりを欲しがるなんて、 そんなに弱い人間だったのか!?と 自分に言った。 あいつが 氷柱が……、 もう自分の中で消せない存在になってるんだ……。 クロサギ トップへ戻る