090619 黒崎X吉川
黒崎が夏でもあのコートを着ていて、脱水症状で少しふらふらする話
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「クロちゃん~。ご飯ですよ~」
 俺が仕事から戻ると、あの女の声がした。
懲りもせずに、また餌をやって……。
あいつもどこの猫か分からなくなってきたな。
 階段を何時もの様に登っているつもりだった。
だけど、何だか体が重い。

「おい……」
「黒崎……もう、クロちゃんお腹空いて、
私の部屋のドア、引っ掻いてたんだから、黒崎?」
 視界が暗くなって、鈍い音がした。
次に意識が戻った時、俺は女の肩を借りてた。
「もうすぐでベットだからっ」
必死で俺を運ぼうとしてた。
その後、ベットの縁で二人して倒れ込んだ。
ふんわりとした匂いがして、何だか安心した。

 ……冷たい…… 
「起きた?はい、水。もう、ちゃんと水分取ってる?
夏なのに、コートなんて着てるからよ」
 
 ずっと付いててくれたのか?とか、
ありがとな、とか、普通なら言える。
けど、俺は黙って受け取った。

「大丈夫そうね。じゃあ私はこれで」
 背を向ける、女を返したくなかった。
何だかそんな気がしただけかも。
ただその結い上げた髪を、自分の手で自由にしたかった?
 のか。
 俺の腕の中に彼女はすっぽりと入って、胸や背中が重なった。
「黒崎……」
 俺の名前を呼びながら、
俺の腕から逃げ出そうとしない。
「氷柱……」
 俺は、髪に顔を埋めて匂いを嗅いだ様だった。
次の瞬間、我に返って、女を自分の部屋から追い出した。


仕事で疲れたぐらいで、
人の温もりを欲しがるなんて、
そんなに弱い人間だったのか!?と
自分に言った。
あいつが
氷柱が……、
もう自分の中で消せない存在になってるんだ……。

クロサギ
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