「おらっ食ってもうまくねぇだよっ!!」 悟空が帰って来て、やっと落ち着いたかと思われた、孫家は今、 3年後に現れる強敵と闘う為に日々修行をしている。 現在チチは悟空、悟飯、そしてピッコロの世話をしている。 毎日、泥んこで帰って来る三人の飯を作り、衣類を洗う。 彼らは毎日、毎日修行で不満が溜まっていた。 『悟空さとピッコロだけが闘えばいいっ』 チチは今でもそう思っていた。 でも今は、両手に買い物袋を抱えて、全速力で猪から逃げていた。 せっかく町まで出て買って来た食料を落とす訳にも行かず、止まる訳にも行かない。 このままでは自分は食べられてしまう。 チチは思わず、助けに来るはずもない夫の名前を叫んだ。 「悟空さ! 助けてけろっ!!」 その頃、悟空たちは修行を一休みしていた。 悟空はチチの声が聞こえた様な気がして、ピッコロに 「ピッコロ、悟飯を頼む」 そう言い残して、消えてしまった。 悟空はチチの気を見つけて、そこへ瞬間移動した。 「お父さん? どうしたんだろう。突然」 「悟飯。休憩は終わりだ。始めるぞ」 「はいっピッコロさん」 「チチ、どうしたっそんなに走って」 悟空はチチの横を走っていた。 チチは突然現れた悟空に驚きつつ後ろ後ろっと叫んだ。 「んっ??」 悟空は後ろを振り返り、猪の存在を確認した。 そして姿を消したと思うと、地面が悲鳴をあげた。 猪は悟空の拳によって倒されたのだ。 もう追いかけて来ない……。 チチは胸を撫で下ろし、その場に座り込んだ。 「旨そうだなぁ~」 悟空は改めて自分の倒した、デカイ猪を見てそう叫んだ。 「悟空さ!」 「ごめん、ごめん。でーじょーぶかチチ?」 さしのべられる大きな手。チチは悟空の手を取った。 悟空はチチを立ち上がらせると 「これ持ってけーるか。チチちょっと待ってろよ」 悟空は猪そして、チチが買って来た食材を抱えると、また消えた。 「ちょっ 悟空さ!?」 チチがその場に取り残されたのはほんの数分だった。 「よっ待たせたな」 「悟空さっ買い物袋は!? まさか一人で食っちまったんじゃ」 「そんなことしねぇって、家に置いて来ただけだってっ オラ達もけーろ」 チチの肩を抱いて、瞬間移動のポーズを取ると、突然動かなくなった。 何か悩んでいる様だ。 「悟空さ?」 「瞬間移動じゃっ早く着き過ぎちまうっ 筋斗雲~よ~っ」 悟空は筋斗雲を呼び出すと、チチを抱き上げて、乗った。 「ちょっ悟空さっ」 「たまにはいいだろ」 顔が赤くなるチチをよそに、悟空は我が家へと筋斗雲を進めた。 久しぶりの二人っきりの空中デートだ。 チチは意識して、悟空の顔を見れなかったりした。 途中、隣山の夫婦とすれ違った。 「恥ずかしい……」 「何っ恥ずかしがってんだ?」 「なぁ悟空さっおら、こういうのもいいけど、エアカーでドライブに連れてて欲しいだっ」 お姫様抱っこのまま宙を行く、チチは思わず、悟空の首に回した手に力が入る。 「でも、オラ免許持ってねぇ~しっ飛んだ方が早えぇぞ」 「じゃあ免許取ってくれっ なっ」 「んっ 分かった。じゃあそうする」 「うだっ」