100206
「おらっ食ってもうまくねぇだよっ!!」

 悟空が帰って来て、やっと落ち着いたかと思われた、孫家は今、
3年後に現れる強敵と闘う為に日々修行をしている。
現在チチは悟空、悟飯、そしてピッコロの世話をしている。
毎日、泥んこで帰って来る三人の飯を作り、衣類を洗う。
彼らは毎日、毎日修行で不満が溜まっていた。
『悟空さとピッコロだけが闘えばいいっ』
 チチは今でもそう思っていた。

 でも今は、両手に買い物袋を抱えて、全速力で猪から逃げていた。
せっかく町まで出て買って来た食料を落とす訳にも行かず、止まる訳にも行かない。
このままでは自分は食べられてしまう。
 チチは思わず、助けに来るはずもない夫の名前を叫んだ。
「悟空さ! 助けてけろっ!!」
 その頃、悟空たちは修行を一休みしていた。
悟空はチチの声が聞こえた様な気がして、ピッコロに
「ピッコロ、悟飯を頼む」
 そう言い残して、消えてしまった。
悟空はチチの気を見つけて、そこへ瞬間移動した。


「お父さん? どうしたんだろう。突然」
「悟飯。休憩は終わりだ。始めるぞ」
「はいっピッコロさん」


「チチ、どうしたっそんなに走って」
 悟空はチチの横を走っていた。
チチは突然現れた悟空に驚きつつ後ろ後ろっと叫んだ。
「んっ??」
 悟空は後ろを振り返り、猪の存在を確認した。
そして姿を消したと思うと、地面が悲鳴をあげた。
猪は悟空の拳によって倒されたのだ。
もう追いかけて来ない……。
チチは胸を撫で下ろし、その場に座り込んだ。
「旨そうだなぁ~」
 悟空は改めて自分の倒した、デカイ猪を見てそう叫んだ。
「悟空さ!」
「ごめん、ごめん。でーじょーぶかチチ?」
 さしのべられる大きな手。チチは悟空の手を取った。
悟空はチチを立ち上がらせると
「これ持ってけーるか。チチちょっと待ってろよ」
 悟空は猪そして、チチが買って来た食材を抱えると、また消えた。
「ちょっ 悟空さ!?」

 チチがその場に取り残されたのはほんの数分だった。

「よっ待たせたな」
「悟空さっ買い物袋は!? まさか一人で食っちまったんじゃ」
「そんなことしねぇって、家に置いて来ただけだってっ オラ達もけーろ」
 チチの肩を抱いて、瞬間移動のポーズを取ると、突然動かなくなった。
何か悩んでいる様だ。
「悟空さ?」
「瞬間移動じゃっ早く着き過ぎちまうっ 筋斗雲~よ~っ」
 悟空は筋斗雲を呼び出すと、チチを抱き上げて、乗った。
「ちょっ悟空さっ」
「たまにはいいだろ」
 顔が赤くなるチチをよそに、悟空は我が家へと筋斗雲を進めた。
久しぶりの二人っきりの空中デートだ。
チチは意識して、悟空の顔を見れなかったりした。

 途中、隣山の夫婦とすれ違った。

「恥ずかしい……」
「何っ恥ずかしがってんだ?」
「なぁ悟空さっおら、こういうのもいいけど、エアカーでドライブに連れてて欲しいだっ」
 お姫様抱っこのまま宙を行く、チチは思わず、悟空の首に回した手に力が入る。
「でも、オラ免許持ってねぇ~しっ飛んだ方が早えぇぞ」
「じゃあ免許取ってくれっ なっ」
「んっ 分かった。じゃあそうする」
「うだっ」