Gガンダム
 地球に住み始めて約一ヶ月、後二ヶ月で俺達の結婚式だ。
元々、盛大にするつもりはなかったが、回りがやれやれと言うので、俺達もそれなりの準備をすることにした。
式は厳かやな、京都で行う。披露宴での一番の見物は、ガンダムファイトで使われたフィールドで、ガンダムファイトを観戦する。
そんな準備に汗を流して、俺達二人の間に、溝が出来た様に感じた。
 何故ならあれ以来、手すら繋いでいないからだ。
俺はみんなの後押しがあって、やっとレインに気持ちを告白出来た。
その気持ちに偽りはないが、やはり自分は誰かの後押しがなければ、なかなか積極的に動けないようだ。
 ああしかし、彼女は俺に何を求めているのか? よく分からん。
俺は今新居を抜け出して、爺さんの船に来ている。
悩みを打ち明けるのもなんなので、押し黙っていると、爺さんは夕食を一緒に、と言ってくれたので、そうさせて貰うことにした。
家で二人一緒にいると、何だか気まずい、飯は喉を通るものの、味なんて感じない。
そんな日々が続いていたものだから、俺は腹一杯に料理を平らげて、久しぶりに食べることを楽しんだ。
「所で、新居での生活はどうだ?」
「何とも言えんな……」
「ドモン兄ちゃん、レイン姉ちゃんに愛してるって言ってる?」
「何! 言うものなのか?」
「私は毎日でも言って欲しいなぁ~」
「毎日かどうかは別として、お互いの気持ちを確かめ合うことが大切だと思うけどな~」
「ふむ、お互いの気持ちか、よしでは早速帰ってレインに俺の気持ちを伝える事にしよう」
 俺は急いで家に帰った。
まぁその時間はすでに七時を過ぎていた。
家に帰ると、むせかえるほどの煙が家の中に充満していた。
しかし、どうやら火事ではないらしい。焼き魚にラップがされて、置かれている。
 どうやら今日のメインは、焼き魚だったらしい。
部屋の換気扇を回して、ひとまずことなきをえた。
レインはと言うと、寝室のベットに横たわっているのである。
まさかと思い、息をしていることを確認すると、やっと安心した。
 そうして、起こさぬ様に静かに部屋を出ると、焼き魚の睨めっこだ。
先程腹一杯食べて来た自分の腹の容量は、後どれくらい残っているのか。
 とりあえずテレビでも見ることにして、ソファに座り、のんびりすることにした。
ふぅ、何だかレインに見られていなければこの家も居心地がいいな。
 何故、あんなにも意識してしまうのか分からない。
やっぱり自分の気持ちを伝えたせいか? しかし、恥ずかしいことを、夫婦と言う者は毎日の様に言うのだとすれば、俺にそんなことが出来るだろうか?
 ガンダムファイトに明け暮れていた俺はそんな気持ちを打ち明ける術さえ忘れてしまった様に思える。
「レイン……」 
 一人、彼女の名前を呟いた。
 
「ドモン、どこをぶらついていたの?それともどこかにいい人でもいるのかしら?」
「レッレイン!?」
 後ろに、立っていたのはレインだった。
寝起きのせいもあるのか、機嫌が悪そうだ。
「私の料理も手につかないなんて、もう私達終わりね」
 とぐらりと、倒れそうになったレインを、ソファに座らせた。
「爺さんの所でご馳走になってたんだ。しかし、レインの料理も食べる」
「そうならそうと、電話ぐらい入れたらどうなの!」
 言われてみればそうだ。
レインは独り言の様に、本当に男って勝手なんだから、と言っている。
よし、試しに
「レイン、好きだ」
「……その言葉で女の子をたぶらかしてたのね」
「何を言ってるんだ。レイン、こんなこと好きでもないやつには言えるか? レインだから言いたいんだ」
 反応がない?レイン?
「どっどうした?」
 顔を見ると、涙を流していた。俺の手は自然と、レインの涙を拭いた。
「不安にさせてごめん。レイン……」
「ドモン、私も好きよ」
「嬉しいよ」
その時の温もりを、俺は忘れないだろう。
いくら好き同士でも、言わないと伝わらないこともあるということみたいだ。

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